• HOME
  • 21世紀のエネルギーを考える会・みえについて
  • 会長あいさつ
  • 事業計画
  • 役員紹介
  • 活動内容
  • 会報誌

活動内容

役員研修

【年度】2017年度

2018年2月22日「第17回役員懇話会」

 平成30年2月22日(木)、プラザ洞津において「第17回役員懇話会」が開催され、小林会長はじめ役員43名が参加しました。
 当日は、『中部電力が取組む火力発電の課題と挑戦および最新技術の概観』をテーマとし、中部電力株式会社執行役員発電カンパニー火力発電事業部長の栗山章氏が講演しました。
 本日は、当社が取り組んでいる火力発電事業の概況について、取り巻く環境の変化に伴う課題、課題に対する取り組みをお話させていただきたいと思います。また、今後の低炭素社会を実現していくための火力発電事業の取り組みの概観についてもご説明させていただきたいと思います。
 火力発電事業を取り巻く環境では、2016年4月にスタートした電力の小売全面自由化により、競争に打ち勝つ低廉な電気を発電する取り組みが必要となったことやパリ協定が採択され、2030年度までに2013年度比で温室効果ガスの排出量を26%削減する目標達成のため、電源の低炭素化に取り組む必要があることなどの課題があります。
 当社は、エネルギー資源が少ない我が国の現状を踏まえて、火力発電についてはできる限り熱効率を上げて燃料使用量を削減する取り組みを進めてきました。ここ三重県においても、川越火力発電所1・2号機は世界で初めて超々臨界圧二段再熱方式を採用し、その当時で46%の熱効率でございました。その後、四日市火力発電所でガスタービンと蒸気タービンから成るコンバインドサイクルを当社で初めて採用し、熱効率が飛躍的に向上いたしており、このたび運転開始となりました西名古屋火力発電所では、熱効率62%を達成し、世界一の熱効率としてギネス申請をしているところであります。この熱効率向上の取り組みは、燃料量の削減により、経済的効果と地球温暖化対策を同時に達成できることから、火力発電事業においては、過去からその研究と技術開発を継続してきており、当社の火力発電における熱効率は世界でもトップクラスであります。
 また、発電事業全体においても、ここ三重県四日市市で木質バイオマス専焼プラントの建設を進めており、バイオマス発電をはじめ再生可能エネルギーの導入も進めております。このように、当社は、供給面における低炭素化、高効率化になど安定供給、経済性、環境性の3つを同時に達成して、お客様に貢献していくことを目指し事業を展開しております。
 次に、今後の低炭素社会を実現していくうえでの火力最新技術の概観についてお話しします。まず、二酸化炭素の分離回収、貯留(CCS)については、2020年頃の実用化を目指して、地震が起きても、貯めたCO2が大量に放出されることがないか、二酸化炭素の圧入によって地震が発生しないかなど安全安心できるシステムであることを検証していくこととしています。しかし、これを事業化するには政策面から支援が必要であり、コストがかかる点、全体の発電効率が大幅に低下してしまうというデメリットなどを踏まえて、社会全体で必要性の理解を深めていくことが重要であると考えています。
 次に、石炭ガス化発電(IGCC)は、微粉炭をガス化炉で高温の石炭ガスを発生させ、そのガスから大気汚染の原因となる硫黄化合物などを除去したうえで、ガスタービンと蒸気タービンでコンバインドサイクルによる発電をするものです。これにより、従来の石炭火力に比べて、約20%の二酸化炭素排出量の削減が図れます。この石炭ガス化プロジェクトは福島県で世界に先駆けて運転し、経済復興や雇用創出などに役立てるとともに、エネルギーや環境問題に貢献する技術で福島県が世界を牽引していくことを目指し、福島県いわき市などで実証実験が実施されています。しかし、これまでの実証実験において、プラント停止につながる設備トラブルが多い、建設コストが高いなどの課題も分かってきております。
 このように、双方の研究・技術開発は発展途上でありますが、今後の政策動向などを見極めるとともに、当社は、引き続き、火力発電の高効率化などを推進し、電力の品質向上、安定供給に貢献してまいりたいと考えております。

2017年11月20日「第16回役員懇話会」

 平成29年11月20日(月)、プラザ洞津において、「第26回役員懇話会」が開催され、小林会長はじめ役員40名が参加しました。
 当日は、『福島第一原子力発電所の廃炉と福島の復興に向けて』をテーマとし、立命館大学衣笠総合研究機構 准教授の開沼博氏が講演しました。
2011年、東日本大震災での福島第一原子力発電所の事故があり、事故の収束、復興と向き合う中で、「課題の本質を掴み、課題解決の糸口を見つけ、そこに人、物、金の交流を図る」ことが重要であると考えるようになりました。
 さて、福島というと福島第一の汚染水の問題や廃炉費用問題、避難指示解除などのニュースが流れ、何となく福島のことは理解していると思っている方もおられると思います。そこでは、「避難」「賠償」「除染」「原発」「放射線」など、福島らしい言葉を使ってこれが福島の問題だとした報道が多くありますが、最も大きな問題は「福島のことを語りにくい」ことにあり、福島のことを語りにくくしている3つの壁があります。
 まず1点目は「福島問題の過剰な政治問題化」であります。例えば福島産のものを食べたいと言っただけで、放射線の風評被害の抑止だとか、原子力発電の推進なのかみたいな話になり、地元ではそんなつもりでもないのに勝手なイメージで話されてしまうことがありました。2点目は「福島問題の過剰な科学問題化」であります。セシウム、トリチウムなどのように専門の科学者しか理解できないような言葉や数字を並べて過剰に問題化しているところがあります。3点目は「福島問題のステレオタイプ化とスティグマ(負の烙印)化」であり、分かりやすく言うと「差別化」ということであります。Googleのサジェスト機能を使って「福島」というキーワードで検索をすると、「子供甲状腺がん」「被ばく」などが挙がってきます。震災から相当な時間を経過してもなお、福島は、残念ながらステレオタイプ化されてネガティブに捉えられており、この状況をどう切り崩していくかが課題であると思っています。
 それには、きちんとデータを示すこと。その裏側で、なぜそうなるかという根拠を発信していくことが必要であると考えています。
すなわち社会学でいうデータ&論理&ローコンテスト化が必要だということです。データや論理を整理して、これとこれがポイントというような情報発信ができれば良いのではないかと思います。では、みなさんはどのくらい福島のことを理解しているのでしょうか。例えば人口の話ですが、震災前に福島県で暮らしていた人のうち、今県外に避難して暮らしている人の割合はどのくらいと思いますか。答えは「1.7%」です。200万人のうち3.5万人ほどです。全国意識調査での回答平均値は25%で現実と10倍くらいの差が生じています。2013年、ある新聞が社説で「事故の影響で福島県では、人口流出、雇用減少が続いている」と報じました。果たして本当にそうなのかとデータを見ると違うんですね。まず、福島からの転出者については2012年12月頃には転出傾向が落ち着きつつあることがデータで示されています。また、人口についても震災があってもなくても減少傾向にあったことはトレンドを見ると明らかなんです。いわき市、郡山市には、相双地区(相場・双葉)から人が流入したり、復興住宅などで地価が高騰するなどの現象もありましたが、どうも、震災があって、原発事故があって人がどんどん流出しているようなイメージとはちょっと違うなと思うわけです。少なくともデータでは人口減少のトレンドは震災前の水準に戻りつつあります。そして、人口減少には、福島に限らず、全国でも、「自治体消滅」の危機にあるところは多数あり、過疎化、高齢化が進む地域では、地域内格差から、都市部に生活者が移住していく傾向にあり、20年から30年をかけて衰退していくと考えられています。福島でも長期的に見ると人口増減の程度は全国と同水準であると言えます。これが、震災によって2~3年で人口流動が一気に進んだと言えるのではないかと思います。
 このことをよく考えてみると、少子高齢化、地域間格差、人口流出という問題が見えてくるわけですが、これらの問題は「震災があったから」「原発事故で放射線が放出されたから」と言って発生した問題では必ずしもなく、全国で起こっている問題であることも理解していただけると思います。確かに、震災によって他の地域では20年から30年かけて進んでいく問題が、一気に表面化、可視化したとは思いますが、福島だけに特化した問題ではないはずです。少子高齢化などの課題解決を考えていくうえでも、福島は先進的な位置づけにあるのかもしれません。
 また、福島県の漁業の2014年水揚量は2010年に比べてどのくらいに回復しているでしょうか。答えは福島に揚がる量は22%、福島に所在地がある漁師さんで60.7%となっています。これは農作物も同様ですが、価格下落が背景にある数字です。要するに福島に所在地がある漁師さんは、魚を水揚げして、福島の港に揚げると低い価格で取引されるので、宮城県などの港に水揚げするという流通構造上の問題があるのです。また、放射線量についても農作物と同様にモニタリングをしており、現在では規定値を超えるものは「0」となっています。魚は2年くらいで世代交代をしますが、事故当時に泳いでいた魚で今生き残っているものは殆どいなくなっています。今現在、福島第一原子力発電所を背にして一番直近の海水のサンプルから検出される放射線量は2~3Bqです。100Bqを超える魚が水揚げされるリスクがないことが理解していただけると思います。
 最後に、出生率は全国平均では福島は高い水準にあります。有効求人倍率が高く就職が進んだことで収入が安定し子供を作りやすい環境となっているのだと思います。震災を経験し、家族の絆を意識したことで結婚や出産といったことを若い人たちが大切に思うようになったことも背景にはあるのだと思います。
 一部の報道などから、子供の甲状腺がんが増えており、出産を控えたり、家庭内でも意見が分かれて離婚に至るなど変なことが起こっているのではないかと思ってみえるかもしれませんが、それはありません。実際に起こっているのは子供の肥満など生活習慣病が問題となっています。外で遊ばない子供などが要因だと思いますが、虐待やうつ病なども多い傾向にあります。さらに、震災関連死の方も県内で2000人を超えています。避難先でうつ病や生活習慣病で亡くなられた方です。このようなことには長期的に支援、ケアが必要だと思います。避難がどれだけのリスクを伴うか、南海トラフ巨大地震などに対して、もっとこのことを議論すべきなのかもしれません。低線量の放射線被ばくでの発癌リスク0.1%のことを論じることもありますが、それ以上に、避難者の生活習慣病リスクが1.6倍になったデータを見て対策を考えていくべきだと思いますし、そうしなければ、福島第一原子力発電所の事故の教訓を十分に活かせないのではないかと思います。
 以上のように、イメージだけにとらわれず、現実の福島を見て「何が起こっているのか」「何が問題なのか」「どうすれば解決できるのか」を考えていただきたいと思います。

2017年9月5日・6日「役員視察会」

 平成29年9月5日(火)~6日(水)に、日本原燃(株)原子燃料サイクル施設(再処理工場、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター、MOX燃料工場など)を35名が視察しました。
 本年度の役員視察会は、原子力発電所の使用済燃料をリサイクルする原子燃料サイクルの仕組みなどを学ぶため、青森県六ヶ所村の日本原燃株式会社原子燃料サイクル施設を訪れました。
 六ケ所村は1969年5月に、新全国総合開発計画が閣議決定され、この地域を一大工業地域とする国の計画が組み入れられた以降、紆余曲折を経て、現在、原子燃料サイクル施設の他、国家石油備蓄基地があり、国内12日分の原油が備蓄されるなど、我が国のエネルギーを支える重要な地域となっています。
 我が国では、原子力発電所で使い終わった燃料をそのまま廃棄せず、再処理をして、ウランやプルトニウムを分別、回収し、使用済燃料の約96%を新しい原子燃料としてリサイクルする原子燃料サイクルの確立を目指しています。なお、残った4%は再処理の際に発生する廃液であり、ガラス固化体(廃液とガラスと混ぜ合わせて固化したもの)として、高レベル放射性廃棄物となりますが、この最終処分についても現在、国主導で処分地選定などに向けて国民への理解活動が進められています。
 このような背景を踏まえて、今回の視察では、使用済燃料がどのように再処理され、まだ使えるウランとプルトニウムをいかに回収しリサイクルするのか、いかに廃液とガラスを混ぜて安定した固化体にするのか、などの技術面について見識を深める場となりました。
 まず、PR館にて模型展示物などで使用済燃料の再処理のしくみなどを理解したうえで、実際の再処理工場や高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターなどを視察し、徹底したセキュリティと放射線管理などで安全かつ着実に作業がなされていることが理解できました。現在、再処理工場は稼働前の最終局面に来ており、これまでに受け入れた使用済燃料約3,393トンのうち、425トンは既にアクティブ試験にて再処理済で、今後、国の規制基準への適合に向けて、安全対策などを実施していくとのことでした。
 次に、視察後、地元の六ケ所村商工会の会長様、副会長様、事務局長様を交えての原子燃料サイクル事業に関する意見交換を実施し、そのなかで会長様は「昔はこの土地の気候などから地場産業が栄えにくく、出稼ぎをしていたが、このような事業が着工され、若者がこの土地で暮らしていけるようになった。雇用問題の解決に繋がっている」と述べられました。
 さらに、この事業を地元が合意した経緯について、副会長様が、日本原燃㈱様と「対話の上に対話を重ね、決して嘘をつかずに説明責任を果たす」ことで信頼関係を築いてきたと述べられました。
 また、この事業は高い技術力を持った大手メーカーの技術者が携わることから、その者から地元の若い事業者が技術習得し、この事業の一端が将来的に担えるように支援をするなど、若い技術者の人材育成にも積極的に取り組まれていることが紹介されました。
 今回の視察は、資源の少ない我が国において、貴重な準国産エネルギーである原子力を我が国の産業や暮らしを支えるエネルギーのひとつとするため、地域が一体となって原子燃料サイクル事業を進めていることに感銘を受け、早期にこの事業が成就することを願うものとなりました。

2019年度へ 2018年度へ
2016年度へ 2015年度へ 2014年度へ 2013年度へ
2012年度へ 2011年度へ 2010年度へ 2009年度へ

ページトップへ